第4回 心は身体の中でつくられている
「今日はなんだかイライラする」
「気分が落ち込む」
「やる気が出ない」
そんな日があると、
「今日は心の調子が悪いんだ」
「私、ちょっと疲れているのかな」
と、心の問題として考えることがあります。
でも、私たちの「心」は、
身体とは別の場所に存在しているわけではありません。
脳も身体の一部です。
そして、
私たちが毎日食べているものから得られる栄養素は、
身体をつくるだけではなく、
脳や神経系が働くためにも使われています。
だから私は、
心を整えることを考えるとき、
身体のことを切り離して考えることはできない
と思っています。
心は、身体の中で起きている
例えば、
神経伝達物質の一つであるセロトニンは、
必須アミノ酸であるトリプトファンを材料としてつくられます。
また、
ノルアドレナリンなどのカテコールアミンは、
チロシンなどを材料としてつくられていきます。
もちろん、
「トリプトファンを食べれば幸せになる」
「この食品を食べれば気分が上がる」
というような単純な話ではありません。
実際には、
栄養素の吸収や代謝、
体内でのさまざまな反応、
神経系の働きなど、
多くの仕組みが関わっています。
だからこそ、
「この食材を食べれば心が整う」
という一面的な考え方ではなく、
毎日の食事によって、
私たちは自分の身体という土台をつくっている
と考えてみたいのです。
「何を食べるか」は、「どう生きたいか」につながっている
私は料理を仕事にしてきて、
「料理が上手にできるようになること」
以前に、料理をする時間を
楽しんで頂きたいと思っています。
もちろん、働いていると、
家族の待つ食卓を整えるために、
時間に追われてしまう感覚も否めません。
家族のためのごはんを用意する時間は尊い瞬間です。
自分の手で料理をつくり、
旬の食材を味わうことも楽しい。
それを大切な人と一緒に食べる時間も、
とても豊かなものです。
その一方で、
その毎日の料理が当たり前になり、
苦しさやしんどさを感じ始めた時、
次のステージへ入って頂きたいと思っています。
私はそのもっと奥には、
「私は、どんな自分で毎日を生きたいのか」
という問いがあると思っています。
元気でいたい。
穏やかに過ごしたい。
好きなことを楽しみたい。
人と心地よく関わりたい。
自分の人生を、自分の感覚で選びたい。
そう思ったとき、
その人生を生きていくための身体が必要になります。
身体は、私たちが人生を体験するための器だからです。
身体を大切にすることは、自分を大切にすること
私たちはつい、
「もっと頑張らなきゃ」
「ちゃんとしなきゃ」
「気持ちを切り替えなきゃ」
と、心を変えようとします。
でも、心を変えようとする前に、
「私は今日、ちゃんと自分の身体を感じているだろうか?」
と立ち止まってみる。
お腹が空いていないか。
疲れていないか。
眠れているか。
身体が冷えていないか。
そして、
「今日の私は、何を食べたい?」
と、自分に聞いてみる。
これは単なる健康管理ではありません。
自分の身体の声を聞く練習です。
そして身体の声を聞けるようになると、
少しずつ、
「私は本当はどうしたい?」
という、自分の人生の声にも気づけるようになります。
「健康のため」だけではない食事
食事というと、
「健康のためにバランスよく食べましょう」
と言われることが多いですよね。
もちろん、それは大切です。
でも私は、
それだけでは少しもったいないと思っています。
食事は、
病気にならないためだけにあるのではない。
数字を整えるためだけにあるのでもない。
「正しい食事」をするためだけでもない。
毎日何を食べるのかという選択は、
「私は自分をどう扱うのか」
という選択でもあるからです。
忙しいから何でもいいものを口に入れるのか。
疲れているから、
自分の身体が喜ぶものを選ぶのか。
誰かに「これが正しい」と言われたから食べるのか。
それとも、
「今の私には何が必要だろう?」
と、自分に問いかけて選ぶのか。
同じ「食事」でも、
その中にあるものは全く違います。
自分の身体を、自分の人生の味方にする
身体は、私たちが生きている間ずっと一緒にいてくれます。
嬉しいときも。
悲しいときも。
頑張っているときも。
何もしたくないときも。
ずっと私たちを乗せて、
一緒に人生を歩いてくれている。
だから私は、
身体を「管理するもの」としてではなく、
自分の人生を一緒につくっていくパートナー
として見てみたいのです。
身体の声を聞く。
必要な栄養を知る。
食べるものを自分で選ぶ。
そして、自分の感覚を少しずつ取り戻していく。
それは、
「健康になるための努力」
というより、
「自分の人生を、自分の手に戻していくこと」
なのだと思います。
今日、自分に聞いてみる
今日の食事を前にしたとき、
「何を食べれば正解?」
ではなく、
こんなふうに自分に聞いてみてください。
「今日の私は、何を食べてあげたい?」
そして、もう一つ。
「私は、どんな身体で、どんな人生を生きたい?」
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
自分に問いかけることそのものが、
自分を大切にする一歩になります。
食べるものを選ぶことは、
未来の自分の身体を選ぶこと。
そして、
その身体でどんな毎日を生きるのかを選ぶこと。
だから私は、
食べることは、生き方を選ぶこと
だと思っています。
今日の一食から、
自分の人生を、自分で選んでいきましょう。