第8回「人のために生きる」から「自分も大切にする」へ
「大丈夫?」
そう聞かれたら、
「大丈夫です」
と答えてしまう。
本当は疲れているのに。
本当は少し休みたいのに。
本当は誰かに助けてほしいのに。
相手のことを考えて、
「私が我慢すればいい」
と思ってしまう。
そんなことはありませんか?
優しい人ほど、
自分を後回しにします。
頼まれたら断れない。
困っている人がいたら助ける。
相手が喜ぶことを優先する。
家族のために頑張る。
仕事のために頑張る。
周りの人が困らないように、
自分が頑張ればいいと思ってしまう。
それは、とても素敵なことです。
人を思いやる心は、
その人の大きな才能でもあります。
でも、
ここで一度、
立ち止まってみたいのです。
「人を大切にすること」と
「自分を犠牲にすること」は、同じではありません。
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「私が我慢すれば」が、身体に残っていく
自分のことを後回しにする生活は、
心だけの問題ではありません。
身体にも表れてきます。
疲れているのに休まない。
お腹が空いているのに後回しにする。
忙しいからと食事を簡単に済ませる。
自分の食べたいものより、
家族が食べたいものを優先する。
眠いのに、やるべきことを終わらせようとする。
こうした小さな「自分の後回し」が、
毎日の中に積み重なっていきます。
毎日身体を見ていると、
身体はとても正直だと感じます。
私たちの身体は、
食べたものからエネルギーをつくり、
身体をつくり、
ホルモンや神経伝達物質など、
生命活動に必要なものを生み出しています。
だからこそ、
必要な栄養や休息が不足すれば、
身体はいつものようには働けません。
「なんとなく疲れる」
「集中できない」
「イライラする」
「やる気が出ない」
そんな変化が、
身体からの小さなサインとして現れることがあります。
もちろん、こうした症状には、
睡眠、ストレス、病気など、
さまざまな要因があります。
だから、
すべてを食事だけで解決しようとする必要はありません。
大切なのは、
身体が出しているサインを、
「気のせい」にして無視しないことです。
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身体は「私を大切にして」と教えてくれている
身体を整えることは、
単に健康になることではないと思っています。
それは、
「私は私を大切にする」
という選択を、
毎日の生活の中で始めることです。
例えば、
朝から何も食べずに頑張っている自分に、
「今日も頑張ってね」
ではなく、
「お腹空いてない?」
と聞いてみる。
疲れている自分に、
「まだ頑張れるよ」
ではなく、
「今日は少し休もうか」
と声をかける。
食事をするときも、
「家族のために作らなきゃ」
だけではなく、
「私は何を食べたい?」
と、自分にも聞いてみる。
ほんの小さなことです。
でも、
こういう小さな選択が、
「自分を大切にする」という感覚を育てていきます。
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自分を大切にすることは、わがままではない
「自分を優先したら、誰かが困るんじゃないか」
そう思う人もいるでしょう。
でも、
自分を大切にすることは、
誰かを大切にしないことではありません。
疲れたら休む。
嫌なことは嫌と言う。
自分に必要な食事をする。
眠る。
自分の時間を持つ。
やりたいことをやる。
必要なときには、
誰かの力を借りる。
これは、
わがままではありません。
自分も相手も大切にするための、
土台です。
自分が空っぽのまま、
誰かに愛を与え続けることは、
とても苦しいからです。
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「自律」は、何でも一人で頑張ることではない
ここで、
「自分を大切にする」と聞いて、
「じゃあ、全部自分でやらなきゃ」
と思わないでください。
自律というのは、
何でも一人で頑張ることではありません。
むしろ、
自分の状態を自分で感じること。
自分に必要なものを選ぶこと。
そして、
自分だけでは難しいときには、
人の力を借りること。
それも、自律です。
「今日は疲れている」
と気づいたら、休む。
「これは私にはできない」と思ったら、
誰かにお願いする。
「本当はこうしたい」と感じたら、
その気持ちをなかったことにしない。
自分の感覚を感じ、
自分の人生に反映していく。
それが、
自分の人生を自分で引き受けるということなのだと思います。
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「人のため」から始まった人生を、「自分も」に変えていく
人のために生きてきた人は、
突然、
「今日から自分のために生きよう」
と思っても、
なかなかできません。
だから、
「自分か、人か」に分けなくていいのです。
まず、
「人のために」から
「人のためにも、自分のためにも」へ。
ここから始めればいいのです。
家族のために料理をする。
その中に、
自分が食べたいものも一品入れる。
誰かのために仕事をする。
その中に、
自分が喜びを感じる仕事も入れる。
誰かの話を聞く。
そのあと、
自分の気持ちにも耳を傾ける。
誰かを幸せにしたい。
その願いと同じくらい、
「私も幸せでいたい」
と思っていい。
むしろ、
そこから始まる愛があると思うのです。
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自分を生かすから、相手を輝かせることができる
私は、「自分を生かし、相手を輝かせること」が、
本当の意味での愛だと思っています。
自分を消して、
相手だけを輝かせるのではありません。
自分も輝く。
相手も輝く。
その両方があっていい。
自分の才能を生かす。
自分の好きなものを大切にする。
自分の身体をいたわる。
自分の人生を楽しむ。
その姿を見て、
相手も自分らしく生きられる。
そんな関係が、
私はとても自然な愛の形だと思っています。
だから、
「私さえ我慢すれば」という生き方から、
少しずつ、「私も大切にしていい」
という生き方へ移っていく。
それは、
誰かを愛することをやめることではありません。
むしろ、
もっと長く、
もっと自然に、
人を愛するための土台をつくることなのです。
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今日、自分に聞いてみる
今日からできることは、とても簡単です。
何かをする前に、
一度だけ自分に聞いてみてください。
「私は、今本当はどうしたい?」
お腹は空いている?
疲れていない?
本当は休みたい?
誰かに助けてほしい?
今、何を食べたい?
今日は何をしたい?
その答えが、
どんなに小さなものでも構いません。
「温かいお茶が飲みたい」
でもいい。
「今日は早く寝たい」
でもいい。
「本当は一人で静かに過ごしたい」
でもいい。
まずは、
その声を聞いてあげる。
そして、
できることから一つ、
叶えてあげる。
それが、
自分との関係を変えていく最初の一歩になります。
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身体を大切にすることから、人生を大切にする
身体は、
毎日私たちと一緒に生きています。
疲れたら知らせてくれる。
お腹が空いたら知らせてくれる。
眠くなったら知らせてくれる。
緊張したら身体がこわばる。
安心すると身体がゆるむ。
身体はずっと、
「私はここにいるよ」
と教えてくれています。
だから私は、
身体の声を聞くことは、
自分の人生の声を聞くことにも
つながっていると思っています。
何を食べるのか。
いつ休むのか。
どんな人と過ごすのか。
何を大切にするのか。
どんなふうに働くのか。
何を諦めて、
何を選び直すのか。
その一つひとつに、
「私はどうしたい?」
を取り戻していく。
身体を大切にすることは、
人生を大切にすること。
そして、
自分を大切にすることは、
自分の人生を自分に返していくことなのです。
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だから私は、どう生きたいのか
人のために生きることは、
素晴らしいことです。
誰かを思いやることも、
誰かの役に立つことも、
私たちの人生に大きな喜びを与えてくれます。
でも、
そこに自分がいなくなってはいけない。
自分が存在するからこの世界を体験できるのです。
誰かのために自分を消して生きるのではなく、
自分を生かしながら、人も輝かせていきたい。
自分の身体を大切にする。
自分の気持ちを大切にする。
自分の才能を大切にする。
自分の人生を大切にする。
そして、
そこから生まれた余白で、
誰かに愛を渡していく。
「私さえ我慢すれば」ではなく、
「私も、あなたも、大切にしたい」。
そんなふうに生きられたら、
人生はもっと、
優しく、豊かになっていく。
愛するにはゆとりが必要です。
自分をお腹いっぱいにしてあげること。
身体を整えることは、
健康のためだけではない。
自分の人生を、自分の手に取り戻すためでもあるのです。