第6回 自分を大切にする食べ方
「太るから食べない」
「これは食べたらダメ」
「夜だから我慢しなきゃ」
健康のために始めた食事が、
いつの間にか
自分を縛るものになっていることがあります。
本当はお腹が空いているのに我慢する。
食べたいものを「太るから」という理由で諦める。
反対に、
我慢した反動でたくさん食べてしまって、
また自分を責める。
そんなふうに、
食べることが「自分を管理すること」
になっていないでしょうか。
食習慣は、
自分との関係として現れていると思っています。
食事には、自分への扱い方が表れる
忙しいから、適当に済ませる。
自分一人だから、何でもいい。
家族にはちゃんと料理をするけれど、
自分は残り物で済ませる。
食事の時間さえ惜しくて、
立ったまま食べる。
「自分のことは後回しでいい」
そんな思いが、
知らないうちに食べ方に表れていることがあります。
私自身、料理を仕事にしているからこそ、
たくさんの人の食事を見てきました。
そして思うのです。
何を食べるかだけではなく、
どんな気持ちで自分に食事を与えているのか。
そこにも、自分自身との関係が表れている。
だから私は、
「自分のために料理すること」
を大切にしてほしいと思っています。
自分のために、旬の野菜を選ぶ。
自分の身体が喜ぶものをつくる。
ちゃんと器に盛る。
温かいうちに食べる。
ひと口ひと口、味わう。
これは、特別な健康法ではありません。
とても小さな日常の行為です。
でも、その小さな行為の中に、
「私は私を大切にする」
という意思があります。
身体は「食べたもの」だけでできているわけではない
栄養士として食事を考えるとき、
もちろん栄養素は大切です。
たんぱく質、脂質、炭水化物。
ビタミンやミネラル。
食物繊維。
身体をつくり、動かし、
生命活動を維持するために、
食事からさまざまな栄養素を受け取っています。
だからこそ、
食事を「良い・悪い」だけで判断してしまうと、
食べることの大切な部分を見失ってしまいます。
食事は、身体に必要なものを届ける時間です。
そして同時に、
自分の身体の声を聞く時間でもあります。
今日はお腹が空いているのか。
何を食べると心地よいのか。
冷たいものが欲しいのか、温かいものが欲しいのか。
しっかり食べたいのか、軽く食べたいのか。
食べたあと、身体はどう感じているのか。
こうした感覚に気づいていくことで、
食事は「正解を守るもの」から
「自分を知るもの」へ変わっていきます。
我慢することと、自分で選ぶことは違う
「健康のために甘いものを食べない」
というのと、
「今日は甘いものより、果物が食べたい」
というのは、
同じ「甘いものを食べない」
という行動でも、少し違います。
前者には、
「食べてはいけない」
という我慢があります。
後者には、
「私はこれを選ぶ」
という意思があります。
私は、この違いが大切だと思っています。
健康的に食べることは、
「食べてはいけないもの」
を増やしていくことではありません。
自分の身体に何を入れたいのかを、
自分で選べるようになること。
誰かに言われたから。
流行っているから。
太ると言われたから。
痩せると言われたから。
ではなく、
「私はこれが食べたい」
「今日はこれが身体に合う」
「今の私には、これが必要」
と、自分で選ぶ。
その感覚を少しずつ取り戻していくことです。
食べることは、自分との対話になる
例えば、夕方になってお腹が空いたとします。
「夕食まで我慢しよう」
と、いつもの習慣で決めることもできます。
でも、そこで一度立ち止まって、
「私は今、本当にお腹が空いている?」
「何か食べたい?」
「今の身体は何を求めている?」
と、自分に聞いてみる。
それだけでもいいのです。
答えが「食べたい」なら、食べる。
「もう少し待てそう」なら、待つ。
「温かいものが欲しい」なら、温かいものを選ぶ。
大切なのは、正解を当てることではありません。
自分に聞いて、自分で選ぶこと。
それを繰り返していると、
少しずつ「私はどうしたい?」
という問いを、自分に向けられるようになります。
食べ方を変えると、人生の選び方も変わっていく
私は、食事を整えることは、
単に身体を健康にするためだけではないと思っています。
食事を通して、
「私は何を感じている?」
「私は何が欲しい?」
「私はどうしたい?」
と、自分に聞く。
そして、自分の答えを尊重する。
これは、そのまま人生の練習になります。
人に合わせて決めるのではなく、
「私はどうしたい?」から始める。
誰かの正解を生きるのではなく、
「私にとって心地いいのは何?」と考える。
我慢して選ぶのではなく、
「私はこれを選ぶ」と、自分の意思で選ぶ。
食卓で毎日繰り返していることが、
少しずつ人生にも表れていくのです。
今日から、自分のためにひとつ選んでみる
今日の食事で、ひとつだけ
「自分のため」に選んでみてください。
いつも家族の残り物で済ませているなら、
自分の分もちゃんと器に盛ってみる。
忙しくても、好きな器を使ってみる。
旬の野菜をひとつ選んでみる。
本当に食べたいものを、
「食べていい」と自分に許してみる。
そして、食べる前に一度、
「私は今、何が食べたい?」
と、自分に聞いてみる。
大きく人生を変えなくてもいい。
まずは今日の一食から。
自分の声を聞いて、
自分で選んで、
自分を大切に扱ってみる。
その小さな積み重ねが、
「私は私の人生を選んでいい」
という感覚につながっていきます。
だから私は、どう生きたいのか
食事は毎日あります。
だからこそ、毎日の食事は
自分との関係を見直す、
とても身近な入り口になります。
身体に何を入れるのか。
どう食べるのか。
そして、
自分をどんなふうに扱うのか。
その一つひとつを、自分で選んでいく。
健康になるために、
自分を縛るのではなく、
自分を大切にするために、食べる。
そんな食事の在り方を
お伝えてさせて頂きたいと思っています。
今日の食卓で自分に問いかけてみてください。
「私は、どう生きたい?」
その答えは、
特別な場所ではなく、
今日の一食の中にも
ちゃんと見つけることができるのです。